書評
—大友 英一(浴風会病院院長)—老年者脳血管障害の診断と治療
村上 元孝
1
1東京都養育院付属病院
pp.810
発行日 1983年8月1日
Published Date 1983/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205172
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大友英一博士著「老年者脳血管障害の診断と治療」は,最近の脳血管障害の診断,病態の解明にめざましい進歩をもたらした,例えばアイソトープなどを利用した非観血的診断法,CTにつづいて,生体内のプロトンを核磁気共鳴反応を用いて測定し映像化するNMRの如き,最尖端の知識の記述を目的としたものでなく,最近の老年者層の激増とともにますます重要性をました老年者の脳血管障害の臨床について,著者の20年以上にわたる老年者の診療経験とその間の2,000例をこえる剖検例の検索からえられた成績をもとに記述されたもので,著者のライフワークをまとめた誠にえがたい貴重な本であることが,本書の特徴の第1にあげらるべきである。
本書の内容は脳血管障害の臨床として,脳動脈硬化症,高血圧性脳症,仮性球麻痺,脳卒中の成因,病態と診断,脳卒中急性期の治療,脳卒中後遺症の治療,くも膜下出血,硬膜下出血などの記述のあとに,通常の類書ではとかく軽視されがちであるが,臨床の場で最も重要な脳血管性痴呆,脳動脈硬化性パーキンソニズムについてもかなりの頁がさかれている。これは老年性痴呆をふくめての記述であるが,われわれ内科医の痴呆についての知識は必ずしも充分でないこと考えるとき貴重な記述である。また治療にもかなりの頁がさかれており,親切な記述にあふれている。
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