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特集 閉塞性脳血管障害
脳虚血に伴う膜脂質の変動—脳損傷の発現に関与するアラキドン酸代謝系路
Metabolic changes of membrane lipids following cerebral ischemia with special referenc to the possible pathways of arachidonate metabolism.
浅野 孝雄
1
Takao Asano
1
1東京大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery, Faculty of Medicine, University of Tokyo
pp.41-50
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205055
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近年,生体膜リン脂質の構成成分である多価不飽和脂肪酸(PUFAs),就中アラキドン酸の生体内での過酸化の系路が明らかにされ,その生理的な,また病態での意義が各方面で注目されている。脳虚血においても膜リン脂質の崩壊に伴い多量のPUFAsが遊離し,脳内に蓄積すること,血流再開に伴いそれらの過酸化が生じることは既に示されている13,44,64)。しかし,生体内におけるPUFAsの代謝系路には不明の点も多い。さらに,PUFA,特にアラキドン酸の過酸化には幾つかの反応系路があり,それらが生体に与える影響は異なつたものであることが知られている。脳虚血において遊離された,ないし膜内のPUFAsの過酸化が少なくとも部分的には生じることは間違いないにしても,その過酸化のどの系列が主に賦活され,どのように組織損傷の発現に関与するかは,今後の大きな研究課題となると予想される。本論文では,PUFAsの過酸化のそれぞれの系列について簡略に述べると共に,今迄に得られた知見に基づいて,それらと虚血性脳損傷との関連について考察したい。
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