連載 神経心理学史の里程標・10
Wernickeと連合主義の成立
浜中 淑彦
1
1京都大学精神神経科
pp.1218-1219
発行日 1982年12月1日
Published Date 1982/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406205047
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Gallにはじまる直大脳皮質における平面的機能局在論,これより派生したDax, Broca, Jackson以来の大脳半球優位論,Spencer, Jacksonの神経機能階層論と並んで今一つ重要な大脳機能学説が19世紀に成立した。それは言うまでもなくC.Wer—nicke (1848-1905)にはじまる連合主義学説—Wernicke自身の用語をもつて言えば離断理論Sejunk—tionstheorie—であるが,それが今日一般に精神神経学における対極的学説(たとえばEy:Etudespsychiatriques.I.1947)と見做されているJacksonの階層論と同じく,反射学説と連合心理学という共通の土壌より生まれたことはいささか意外ではあるが,しかし,またきわめて興味深い歴史の戯れでもある。もつともWernickeはこの他WienのT. Meynert (1833-1892)の連合繊維学説をも加味ており,また運動表象,聴覚心像,視覚心像などをそれぞれ該当する皮質中枢に定位した点で,心的現象と身体的過程を峻別したJacksonの立場(con—comittanceの原理)と大きな距離を生じることになった。
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