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神経心理学の解剖学的局面,つまり大脳皮質の局在論的考想を開拓したのがGallであったとすれば,その心理=言語学的局画を最初に詳しく論じた一人は,明らかにMont—pellier学派のJ.Lordat (1773-1870)である。
失語症状が一種の記憶障害である等々の心理学的説明はLordat以前になかった訳ではなく,たとえばルネサンスのA.Guainero (?−1440),J.Schenck von Grafenberg (1585)に遡るものであり,18世紀にはスイスのJ.Gesner (1770)が失語が一般的記憶障害ではなく言語健忘Sprachamnesieであり,表出的言語表象と心像(観念)の結合の障害であるとの,一種の連合心理学的説明すら試みているが,Lordatは自ら失語に罹患(1825)したこともあって,失語を含む言語障害の格段に詳しい心理=言語学的説明と分類を試みた。彼は既に1820年前後からMontpellier大学で言語障害の講義を行っていたが,それが公刊されたのは1843年(Analyse de la parole pour servir à la théorie dedivers cas d'alalie et de paralalie〔de mutisme et d'imperfection duparler〕 que les nosologistes ontmal connus. J. de la Soc. de IaMéd. pratique de Montpéllier, 7; 333&414&8; 1, 1843—H6caen,H. et al,: La naissance de laneuropsychologie du langage. Flammarion, Paris,1962に収録)のことであった。
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