書評
—P.G.Nelson, M.Lieberman 編—Excitable Cells in Tissue Culture
小幡 邦彦
1
1群馬大学
pp.137
発行日 1982年2月1日
Published Date 1982/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204891
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本書は培養細胞を用いて行われた興奮性膜の生理学,すなわち電気現象とイオン輸送の研究についての総説12編から成っている。培養細胞での実験はこれを生体内細胞のモデルとして,生理機能の解析と発生分化の研究を行おうとするもので,この両面は安全に分離することはできないが,本書では主に前者が扱われている。
H.LecarとF.Sachs (第5章)は培養細胞でイオンチャネルのノイズ解析を行う利点として,1)細胞を精細に観察できる。2)結合組織や支持細胞が付着していない。3)成長,栄養効果を研究できる。4)細胞の形,大きさを変えることができる。5)薬物投与の際,拡散のバリアーがない。6)体細胞融合や変異種のクローンを利用できることをあげている。これはすべての培養細胞実験にいえることである。たとえば4)に関しては骨格筋細胞をビンブラスチンや接着性の悪い培養皿で球形にしたmyosac (T.G.Smithら),心筋細胞を紐状,球状に配列させたstrand,cluster (Liebermanら),また本書ではとりあげられていないが神経細胞クローンをポリエチレングリコールで融合させた巨大細胞等が考察され, これにより微小電極法が容易に行われ,実験成績の解析も簡単になる。また5)に関連して,シンチレーターを含有するプラスチック枝に心筋細胞を単層培養し,45Caの交換を経時的に測定するという巧妙な実験(G.A.Langer)が述べられている。
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