書評
—福田 精(岐阜大学名誉教授)—運動と平衡の反射生理 改訂第2版
小池 吉郎
1
1山形大学
pp.575
発行日 1981年6月1日
Published Date 1981/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204773
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本著は,その第1版が昭和32年に発刊され,当時,福田先生の名著と謳われた本であり,この第2版は第1版の内容に加えて,先生が岐阜大学医学部を退官されるまでの,人体の平衡生理に関する数多くの研究の概要をまとめられたものである。
本書は,身体平衡生理の研究に関する福田先生のライフワークともいうべき結晶であり,その内容が,他の医学書ではみられぬ独得な形式と,内容のすばらしさの中に脈々と福田イズムの研究ロマンの香りが,高潔な文調で語られ,読者を熟読へと引きずり込んでしまう。迷路機能の研究は,Bárańy (1907)より始まり,主として体平衡と,迷路の関係について多くの研究が行われ,第2次大戦後は,Jongkees等を中心とした西欧ではCupulometry (迷路閾値下刺激法)による眼振の分析がもてはやされた。これに対し,福田先生は,体平衡の基幹として,本著にその研究の歴史に詳しく述べられてある如く,視器と迷路の協調の体平衡における重要性を追求され,末梢迷路機能の分析のみ重視するCupulometry法の欠点を,視性眼振,回転性眼振を統合した実験,所謂福田の第1,第2,第3回転法により,視器迷路の協調を鮮やかに立証したことは,本書にも詳しく述べられてあるが,先生の最も秀れた業績の1つである。ちなみにCupulo—metry法は,現在では殆ど行われていない。
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