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I.はじめに
1本の運動神経がどれ程の筋線維を支配しているかという問題に対する興味は既に前世紀末にはあつたが,運動単位motor unitの概念を導入し,その術語を造つたのはC.S. Sherringtonである(Liddell Sherrington1925,Sherrington 1925, EcclesとSherrington 1930)。すなわち「骨格筋に反射性収縮を惹き起てす径路の最終的連結は脊髄前角内の大きな運動ニューロンによつて形作られており,これらの細胞の軸索はインパルスを直接筋に伝える。それゆえ,この軸索はそれが支配している筋線維群とともに反射反応における効果器の1単位を構成していることに点り,全体を纒めて"運動単位"と呼ぶ。」(Creedら1932)。ててでは運動ニューロンの細胞体および樹状突起は中枢神経系として"統合"を行う部分として除外されている。しかし,今口では一般に運動単位といえば,細胞体,樹状突起も含めたアルコァー運動ニューロン全体と,それにより支配されている一群の骨格筋線維より構成されると考えられている。後者は筋単位muscle unit部分とも呼ばれる(Burke 1967)。なお,TokizaneとShimazu (1964)は運動ニューロンと筋線維が個々に持つている機能をより重要視し,神経筋単位neuromuscular unit (NMU)とこれを呼んでいる。
一般に成熟した哺乳動物の骨格筋線維は単一の運動ニューロンにより支配されていて,いわゆる多重神経支配はなく(Bagustら1973, BrownとMatthews 1960,Van HarreveldとTachibana 1961),また正常状態では運動ニューロン軸索を下降するインパルスは筋単位に属する全ての筋線維を興奮させる(KrnjevicとMiled1958,PatonとWaud 1967)ことが確認され,運動単位が筋運動のもはやこれ以上分解することのできない素量であるとする概念が厳密な意味で確立された。したがつて,運動制御の最終段階での問題は,各運動単位がどのような特性を持ち,中枢神経系がいかにこれを使用しているかというてとになる。
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