視座
運動単位の増大
津山 直一
1
1東京大学医学部整形外科学教室
pp.537-538
発行日 1973年7月25日
Published Date 1973/7/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1408904857
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運動器官の疾患を対象とする整形外科医は,より良い成績を上げ得る診断,治療上の歩みを常に把握する一方,骨,関節,筋肉の生理,病理や運動を合目的的に遂行する神経の機構などについても新しい知識の基礎的事項は常に吸収に努める必要がある.後者に関しても問題は数々あるが神経成長因子や運動単位の増大の問題もその一つであろう.新生あるいは再生する神経線維の伸び行く方向を決定する何らかの因子が存在し,それが外的環境因子と神経線維自体が有する内的因子により規定されることはWeiss(1949)の研究以来多くの発展があり,積極的に神経成長を促進させる因子(Nerve Growth Factor, NGF)の本態の追求もわれわれには魅力のある問題であるがこれと同様運動単位(Motor Unit)の増大の現象も神経筋系の再建,再構築のための生体の持つ,陰にかくれたしくみの不思議を物語つて尽きない.運動単位とは周知のごとく,一個の脊髄運動細胞とその軸索が末端で分枝して支配を与える何個かの筋線維群からなる単位であつて,これらの筋線維群は運動細胞のインブルスを受けて同時に収縮する悉無律に従うグループであつて,筋収縮力が増加するのは活動に参加する単位数がふえることが主な因子である.運動単位一個に含まれる筋線維の数すなわち神経支配比はSherrington(1892)の研究以来四肢筋では数百から千前後と推定されて来た.
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