Japanese
English
研究と報告
ナルコレプシーの慢性の幻覚妄想状態について
Narcolepsy with Chronic Hallucinatory and Paranoid State
石黒 健夫
1
,
宮坂 松衛
1
Takeo Ishiguro
1
,
Matsue Miyasaka
1
1東京医科歯科大学神経精神医学教室
1Dept. of Neuropsychiat., Tokyo Med. and Dent. Univ.
pp.885-892
発行日 1969年11月15日
Published Date 1969/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201535
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I.はじめに
ナルコレプシーは,睡眠発作,脱力発作,睡眠麻痺のほか,特異な入眠時幻覚をおもな症状とする疾患である23)。この入眠時幻覚は感覚性と実体感に富んでおり,知覚されている瞬間には実在性が確信されるが,これより幻覚妄想状態が発展することは非常にまれで,いつたん覚醒するとただちにそれが"まぼろし"であつたことに気づくのがふつうである。Daly & Yoss5)はナルコレプシーの多数例の検討から,その30%が生々しい異常な感覚体験をもち,幻覚とよばれてよいような実在性の信念をもちうるが,日常これらの患者は十分に理性的であり,入眠時幻覚が状態的な精神病的症状となるようなことはなかつたとしている。
慢性の幻覚妄想状態をきたしたナルコレプシーについては,英米圏内では19世紀より1965年までに14例の報告があり,わが国では臺22),大月ら15)および本田ら14)による報告があるが,このうち本田ら14)の症例を含めた数例はナルコレプシーにおける薬物中毒による幻覚妄想状態の症例である。
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