Japanese
English
総説
企図振戦とその近縁不随意運動
Intention tremor and related involuntary movements
平山 恵造
1
Keizo Hirayama
1
1千葉大学医学部神経内科
1Dept. of Neurology, School of Medicine, Chiba University
pp.1047-1058
発行日 1978年10月1日
Published Date 1978/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204312
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I.はじめに
企図振戦という神経学用語は今日我が国で誤解されたまま使用されている場合が少なくない。それによつて生ずる混乱もみられる。企図振戦と小脳との関係が重視される結果,小脳病変に伴って生ずる動作時のtremulousな手足の動揺のすべてを—ときとしてはhypermetriaやdysmetriaそのものを—企図振戦と誤解している場合がある。他方,動作を企図したときにみられる振戦動揺のすべてを企図振戦と誤つて呼んでいる場合もある。
こうした誤解のよつて来たる理由はいくつかあろうが,その一つは成書などにおける,現象についての簡潔な記述が企図振戦の内容を雑駁にした可能性が考えられるし,またも一つの理由として,現象を具体的に把握するよりも,頭の中で機序・成因を抽象的にとらえることを好む国民性によるのかもしれない。しかし,それ以上に重視されるのは,この分野(不随意運動)における臨床観察の後進性にあるように思われる。後述するように,Charcot以来の企図振戦の概念が行きわたつて今世紀の前半において既に,それとは類似するが異なる現象(症状)のあることが,Charotの国(フランス)で指摘され,検討されていたのに反し,我が国では極く最近に到るまで—あるいは現在においても—それらを企図振戦という一語で表現することで満足して来た臨床観察の相異にあるように思われる。
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