ご存知でしょうが
Neuritis retrobulbarisあるいはArachinitiS Optochiasmaticaの診断のpitfall
千ケ崎 裕夫
1
1防衛医科大学脳神経外科
pp.856
発行日 1977年8月1日
Published Date 1977/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204112
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原因不明の視力障害ははなはだ厄介な問題である。とくに十分な治療方針も定まらないうちに急速に視力が低下し,失明の危険が予想される場合には患者の不安も強く治療を行なう医師の側にも確固たる自信もなく,いたずらに自然の経過にまかせるほかしようのない場合が多い。最近脳神経外科のクリニークで,眼科的に説明できない視力障害の症例の診察を依頼されることが非常に多くなつたが,そのなかに以前より知られていた病態でありながら,ほとんど今日あまり関心のはらわれていない疾患,すなわち蝶形骨洞および後部節骨洞粘液嚢腫mucoceleが予想以上に含まれていることがわかつた。順天堂大学脳神経外科のクリニークで1968〜1975年の8年間に取り扱つた頭蓋外の原因による視力障筈の症例のなかで外科的治療の対象となつた疾患群の表をみても,全症例66例中,mucocele 18例,27%と高い割合を占めていることは注目に価する毒る事実である。
所謂neuritis retrobulbaris或はarachinitis opto—chiasmaticaなどの病名で呼ばれる病態不明の視力障害を示す患者の際に副鼻腔炎症性疾患に注意を払われるべきであることは当然のことであり,mucoceleもその1つであるが,案外診断的に見逃されていることが多い。その理由は視力障害発現時に必ずしも鼻症状が発現していると限らず,のちに詳しい問診によりはじめて鼻症状の既往が発見されることがしばしばであるからである。しかし企く鼻症状を欠いている症例もある(自験18例中5例)ので益々予測診断が困難となる。
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