書評
—Giorgio Gabella 著—Structure of the Autonomic Nervous System
楢林 博太郎
1
1順天堂大学神経学
pp.516
発行日 1977年5月1日
Published Date 1977/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204067
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自律神経系についての総説的な紹介書は少なくはないが,本書は主として解剖学的見地から自律神経系の神経分布,支配を主として総説したものである。両棲類や鳥類での交感神経の記述も交えて,交感神経の脊髄内,外の神経節にはじまり,各臓器での細かい神経支配の記述,頭部での交感神経分布等々の解剖学的記述に多くの頁をさいている。しかし同時にAdrenalinを中心とした化学伝達物質についての最近の知見や,電顕を用いての業績もかなりよく紹介されて居て,現在の自律神経系に関する知見を把握とるには,正確でよく文献を網羅している。
ただ自律神経系の求心路についての記載の少ないことや,高位中枢たとえば脳幹や視床下部の役割などについての記載が少ないことは,その方面についての知識,解明が充分にされていない事情から無理はないが多少不足の感がある。また迷走神経の支配については詳しいが,迷走神経核についての記載は極めて少ない。自律神経系の中枢でのrepresentationが末梢における程には明確にされていないことは確かであるが,臨床神経疾患のなかでShy-Dräger病のような一連のMSA (muitipie systematrophy)群が重要視されてくると共に,今後の急速な研究の進展が期待されるところでもあろう。本書が自律神経についての臨床的な疾患やその症状の記載を一切含まないことは,本書の性質上当然であろうが,臨床家にとつて,自律神経末梢支配の知識を正確に学ぶためには好個の教科書であろう。
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