Japanese
English
総説
機能的脳外科の理念
Idea of the Functional Neurosurgery
大江 千廣
1
Chihiro Ohye
1
1群馬大学脳神経外科
1Department of Neurosurgery Gunma University
pp.481-488
発行日 1977年5月1日
Published Date 1977/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406204063
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I.はじめに
脳神経外科の発展に寄与したいくつかの画期的な出来事を列挙する時に,誰しもが1870年に行われたFlitz and Hitzigの実験をその1つにあげるであろう。これは犬の大脳前中心回と思われる部分を電気刺激しておこる対側上下肢の運動収縮を供覧したもので,このことが,皮質脊髄路の機能を明らかにして行く糸口となって運動の神経生理学の上で重要な出来事となったばかりではなく,臨床医学の面では大脳の機能局在をはじめて明確に提示したということで忘れることの出来ないものとなつている。そして脳神経外科の立場からはこの脳の機能局在論こそが,脳の病変の部位を適確に診断し,更にもしこれが,腫瘍,血腫,動脈瘤等の正常の脳組織からみれば異物又はこれに近いものに由来するのであれば,これを外科的にとり除くという脳神経外科の治療法を可能にしている基本原理であるということが出来る。
これに対してここに述べる機能的脳外科では,脳組織そのものの一部に侵襲を加えることが或る種の疾患の治療につながることから脳の機能局在論そのものの追求であり,その新たな展開ということが出来る。以下に機能的脳外科の源流にさかのぼり,その推移をたどつて,現在我々が行つている選択的定位脳手術に至るまで,一貫して流れている1つの理念を追求し,更にこれが脳外科一般にも通じるものであるという考えを述べたい。
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