- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
I.ジストニー運動とジストニー姿勢
ジストニーにはジストニー運動とジストニー姿勢がある。Herz4)によれば,ジストニー運動は舞踏病,バリスムス,アテトーゼ,チック,拮抗性振戦などと同様な異常不随意運動に属する。多数の映画記録の分析から,彼はジストニー運動の特徴を緩徐な,持続性の頭部および躯幹の捻転(turning)運動と上下肢の回旋(rotation)運動にあるとした。さらにこれらの捻転効果をもつ運動のほかに,広頸筋,肩筋,胸筋,下腿や足の筋のゆつくり持続した緊張が加わる。
一方,ジストニーを特徴とする疾患は,多く10歳代に発症し長期の経過をとる本態性捻転ジストニーtorsiondystoniaまたはdystonia musculorum deformansと,脳性麻痺,脳血管障害,脳炎後遺症,Wilson病,Ha—llervorden-Spatz病などでジストニーを呈する症候性ジストニーにわかれる8,11)。元来ジストニーという言葉は,Oppenheim (1911)5)がdystonia musculorum de—formans (DMD)を1つの疾患単位として提唱した際に,姿勢によつて筋緊張が変化し同一筋に筋緊張亢進と低下状態がみられるという意味で,その病態をDysto—nieとよんだことにはじまる。これは字義通り筋緊張に関するもので不随意運動の特殊型をさすものではなかつた5,8)。その後DMDの概念の変遷に伴って,ジストニーという言葉はDMDの病態からはなれて現在のような内容をもつに到つた。この言葉は現在もなお神経学者の間でその内容が一致して理解されていない。したがつてここではこの概念の歴史的経過の上に立つて,一般に用いられる"ジストニー"の内容を述べ,別にDMDの病態としての不随意運動を示す。
Copyright © 1976, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.