書評
—藤森 聞一 編集—固縮と痙縮—その基礎と臨床
明石 謙
1
1川崎医科大学
pp.901
発行日 1975年8月1日
Published Date 1975/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203760
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痙縮とは何か? 固縮とは何か?その発生は? その程度の判定は?など,我々素人にはいずれもはつきりしない事ばかりである。ただ,関係が無いかというと決してそうではなく,「この痙縮がもつと何とかなつたら」などと考えることはよくあり,そのための工夫も種々している。この問題を勉強しようと思い,成書を2〜3読んでみるとすつきりしない事が大変多く,普段,目にしているのが痙性麻痺で痙縮とは違うにせよ,何となく泥沼に足をつつこんだような気がする。
「固縮と痙縮・その基礎と臨床」を読んでまず思つたことは,前述のすつきりしない事がすつきりしたわけではないが,はつきりしたような気がするのである。例えば痙縮と固縮の定義にしても,数人の執筆者が各々自分の考えを述べ,あるいは他の人達の意見を引用しているため,誰がどう考えているかがわかり,さらに読者が自分の考えをまとめる上に有用な資料を提供してくれる。はつきりしない事については,このような形になつていることが望ましく,有用なのである。この本はそのような点で,大変有益であり,さらに総説的な内容をもつ項も多くあり,多くの情報が得られ文献を探すのにも大変便利でよい。分析方法にしても多くの方法が書かれており,この方面の研究を始めようとする方達にとつて貴重な資料となるであろう。ただ,この本一冊を読むことによりこれらの問題について卒業できるつもりで読むならば失望はまぬがれ得ない。編者もその序で述べているように,この問題は広い分野で魅力的な研究目標であり,まだ今日でも神秘のヴェールに包まれた部分が多いからである。
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