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最近20年間のNeuroscienceの発展はめざましく,とくに,神経興奮・伝導,脳血液関門,脳浮腫,髄液動態などの機構解明にさいしての脳の水分と無機物質との関連が明確にされ,生理・生化学的な検索と電顕の所見があいまつて,新しい展開が目立つている。
この面での研究で,多くの優れた業績をあげられてきたKatzmann博士とPappius博士が,1970年までの20年間の文献を整理され,現状における問題点,将来への展望についても言及されているのが「BrainElectrolytes and Fluid Metabolism」である。題名からは,まことにとつつきにくい感じをうけるのみならず,内容が電解質の変動による膜電位の変化についての生物物理学的なものに終始するような間違つた印象さえうけがちである。ところが,この本の実際の内容は,Katzmann博士が神経学を専攻されていることにより考えてもあきらかであるが,脳の70%以上を占める水分とその変動,無機物質の変動について紹介したあとで,髄液の産生・循環・吸収について,血液脳門関,髄液の酸・塩基平衡,脳の活動とイオンとの関連,無機物質代謝障害,水中毒,水頭症,脳浮腫,頭蓋内圧などについて,各主要テーマごとに1章としてまとめられているのである。全体で18の章より構成され,各章は約20〜40頁が費され,一つの主題の解明にむかつて,著者らの展望を中心に,各国研究者の業績が整理紹介されている。しかも単なる知識の整理に終ることなく,明日への方向を捕えることができるようにSummaryの記述に配慮がうかがえる。各主題間での関連には充分配慮がなされており,重複がさけられ,巧みな構成が目立つ。
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