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頭部外傷の際,頭蓋内血腫がある—したがつて血腫除去手術を行なう必要がある—のか,あるいは脳損傷およびそれに伴う脳浮腫がある—したがつて主として薬物療法を行なう必要がある—のかを鑑別するのはまさに救急治療の最重要のポイントである。1965年われわれは救急医家のために,熟練した手技も大した設備も要せずせいぜいポータブルのレントゲン装置をそなえている程度で,なんとかこれらの鑑別ができるようにと推計学的計量診断法を発表した(日本医事新報2143:3-8,1965,外科治療13:432-446,1965,Proc 3rd InternatCongr Copenngen 1965)。この方法は残念ながらわが国ではあまり用いられていないようであるが,ドイツの学生用の教科書E. Schenk著Neurologishe Unte—rsuchungsmethoden. G. Thieme 1971, pp 175-177にSano-Indexとしてのせられているので,ドイツでは実際に使用され,学生はSanoなるものがどこのだれかもしらずに下記のindexだけはよく知っているものと思われる。それで下記にこのHematoma indexを再録する。
この計数表Hematoma Index (表1)の原理は,推計学でいう最大尤度推定法(maximum likelihood esti—mation method)である。原理や使用法の詳細は文献を参照せられたい。表に示すように左方に10項目,25細目をかかげ,右に(1)硬膜外血腫,(2)硬膜下,脳内血腫あるいは2種以上の血腫の併存,(3)血腫のない脳浮腫の3診断名をあげてある。そして左の各細目の右の各診断名すなわち各病的状態における出現頻度の対数に1を加え10倍した数字を表に書きこんであるのである。
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