Japanese
English
研究と報告
老年期における神経症患者の予後(その1)—推計学的検討
A Follow-up Study on Neuroses of Later Maturity (Part 1): From the Statistical Survey
大原 健士郎
1
,
清水 信
1
,
松村 幸司
1
,
吉沢 勲
2
K. Ohara
1
,
M. Shimizu
1
,
K. Matsumura
1
,
I. Yoshizawa
2
1慈恵医大精神神経科教室
2湘南病院精神神経科
1Dept. of Neurol. & Psychiat., Jikei Univ. School of Med.
2Dept. of Neurol. & Psychiat., Shōnan Hospital
pp.599-607
発行日 1965年7月15日
Published Date 1965/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200871
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Ⅰ.はしがき
老人の神経症に関しては内外の文献7)9)10)11)によつてしても,その発現は必ずしも多くないといわれている。しかし,その実態は明らかでなく,はたして神経症そのものが少ないのか,それとも調査方法に問題があつて対象の選択に困難をきたしているのか,現在,明確にされていない。著者18)による老人の自殺に関する調査成績では,日本の老人自殺率は非常に高率を占めていた。文献5)6)18)によると,老人の自殺では精神病の関与することが多いとされているが,わが国の老人のみに精神病が多発するとは考えがたい。とすると,おそらくは,わが国の家族制度,家族間の人間関係なども影響して,老人に神経症が多いのではなかろうか——それも従来の調査方法に問題を残しているのではなかろうか,という印象を受ける。われわれの報告は,2部に分かれ,(その1)では推計学的な調査成績を,(その2)では症例の検討を中心にして報告するつもりである。
神経症問題では,つねに概念規定が問題とされ,とくに老人においては老化現象や身体疾患との合併とも相まつて,この点が強調されるが,ここでは「精神的原因によつて発現したと考えられる精神および身体の病的現象を呈し,人格の特有な態度を示すもの」とする伊藤11)の基準によつて対象を選択した。
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