書評
—Russell, W. Ritchie 著—The Traumatic Amnesias
別府 俊男
1
1東京女子医大脳神経外科
pp.1680
発行日 1972年12月1日
Published Date 1972/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203248
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頭部外傷による外因性精神病像のなかで外傷性記憶障害の占める割合は大きい。そもそも,外傷性記憶障害に関する研究は1930年にEdinbu—rgh Universityの内科医の博士論文の課題として始められた。当時,著者等は外傷後記憶喪失の研究報告を提供していたが,1940年第二次世界大戦の勃発とともにmissileにょる局所脳障害の症例が増加した。この豊富な頭部外傷患者の魅力に憑かれた著者はEdinburghからOxf—ordの陸軍病院に転じ,頭部外傷sectionでの診療に没頭することになる。このような経歴から,著者および協同研究者の外傷性記憶障害(健忘)に関する研究論文は1932年より1969年までに19部を算えることになった。本書はこれら一連の研究成果をまとめあげたものである。
本書の主軸をなすものは,記憶の生理学的解析であり,脳振盪を主とした意識障害,外傷後健忘,逆行性健忘,記憶痕跡の固定と再生等の諸現象を詳述する。
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