書評
—Hermann Schmidt 著,隣谷 義人 訳—X線断層像解剖アトラス
高橋 信次
1
1名古屋大学
pp.561
発行日 1972年5月1日
Published Date 1972/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406203112
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断層撮影装置は本邦においては中等規模以上の病院,すなわち,レントゲン設備を3台以上もっているところでは必らず1台はもっているというほど普及しているX線撮影の機器である。しかしレントゲン診断にかなり練達の人であっても,断層撮影を十分に読み切る人は非常に少ない。これは断層撮影が作り出すX線像殊に障害陰影に対する理解が十分でないのと,体のある特定の層の局所解剖学的知識が少ないからである。しかも本邦では断層撮影の成書はないといってよい。今度HermannSchmidt教授がRöntgentomogra—phisch-anatomischer AtlasをGustavFischer社より出版された。これは私も欲しいと思っていたら,医学書院で原図をFischer社よりとりよせ,これに隣谷義人博士の立派な日本語訳をつけて出版した。
この断層の本の大きな特徴は,解剖的断面とX線写真とを対比しながら説明しているということにある。ことにこの解剖図はきわめて美麗なもので,これはTübingen大学の解剖学数室のMörike教授の共著が与って力がある。それと対比したX線像であるから,このX線像をみて解剖図を考えることが可能になる。いかにもドイツの本らしく実証的態度が明らかである。そういう意味でたいへん良い本だと思う。また,本邦ではまだ断層撮影というと,胸部にのみ応用するものだと思いこんでいる人が多いが,この本によって身体各部の断層像による局所解剖学的検査が行なわれる機運をつくるだろうとの希望が生れた。
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