書評
—吉井信夫 著—脳波検査—く日常検査の基礎知識シリーズ4>
本間 伊佐子
1
1虎の門病院臨床生理検査室
pp.902
発行日 1971年8月1日
Published Date 1971/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202949
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本書は著者が序文でのべておられるように,脳波検査技師が脳波に対する理解を深めるために,書かれた書である。著者は以前にも,脳波のとり方と読み方(南山堂),図説脳波検査の実際(医学書院)などを発行しており,かねてより著者の脳波に対する豊かな経験から現まれたわかりやすい筆法に感心していたが,今回さらに本書を一続して,まず,この本は脳波技術者の教育用として適切なものであろうと感じた。
私は臨床生理検査室で脳波の診断および検査技師の指導にあたっているが,最近脳波に関する書も多く発行されてきてはいても,適切な本がなく,本当に脳波を正しく記録し,理解するためには脳の解剖学,生理学,臨床脳波などの数冊を用意しなくてはならなかつた。一方,脳波計の発達,普及がめざましく,簡単な操作でだれにでも脳波計が操作できるような時代になつてくると,単に機械的に脳波を記録するという弊害がおこつてくる。脳波検査技師は単に脳波を記録するだけでなく,脳波とはどういうものであるかを改めて考え直したいものである。そのための本として本書は,図説を主としてわかりやすい平易な言葉を用いて,はじめに脳の解剖,神経細胞のはたらき,感覚器(耳や眼),脳のはたらき(脳幹網様体のしくみ,意識,睡眠など)などの基礎的な事柄を説明し,さらに脳波の発達,おもな脳疾患と脳波との関係などがのべられている。てんかん,頭部外傷,脳腫瘍,脳血管障害などについては,著者が脳外科専門であるのでわかりやすく図説してある。
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