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昨年11月に『臨床神経生理学』という本が上梓されたが,これは19年前に出版された『神経生理を学ぶ人のために』という題の本が進化したものである.執筆者は,神経生理学の領域において現在わが国で考えられる最強のペアである柳澤信夫先生と柴﨑浩先生である.しかも,19年前と同様にこのお二人がすべてご自分たちでお書きになっている.だから内容の統一性は見事である.
前書は,例えば筋電図,表面筋電図,末梢神経伝導速度,誘発筋電図,脳波,体性感覚誘発電位,事象関連電位,などという神経生理学的検査の一つひとつを取り上げて解説しているのに対して,本書は一部にそれを残しながらも,「運動神経伝導検査」という項目を設けてその中でMCV,インチング法,F波などを説明したり,「中枢性運動機能とその障害の検査」という項目を作ってその中で錐体路伝導検査,H反射,T波,表面筋電図,重心動揺計測,歩行検査などを解説したりしている.つまり,一つひとつの検査が何を知るための検査であるのかを明示することにより,その意義を理解しやすくする構成になっているのである.検査法をそれぞれ独立に説明するよりも,このほうがはるかに「検査の持つ意義と限界」は理解しやすい.その他には「神経筋伝達の検査」「体性感覚機能の生理学的検査」「視覚機能の生理学的検査」「聴覚機能の生理学的検査」「眼球運動検査」「自律神経系の検査」「随意運動に伴う脳電位」「不随意運動に伴う脳電位」などという項目がある.そうした中に,「高次脳機能の生理学的検査」という項目があり,これは前書にはほとんど痕跡もなかったほどの新しい部分である.注目されている機能画像も含めて本書の目玉の一つと言って良いだろう.そして,後半1/3には,前書にはない疾患別あるいは病態別の解説があるのがうれしい.ここに例えば睡眠時無呼吸症候群やチャネル病なども取り上げられている.
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