書評
「臨床神経生理学」―柳澤信夫,柴﨑 浩●著
飛松 省三
1
1九州大学大学院臨床神経生理学
pp.848
発行日 2009年7月1日
Published Date 2009/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1416100532
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臨床神経生理学とは,ヒトの脳神経系の機能を非侵襲的な方法で研究し,神経・精神疾患の診断・治療に役立てる学問であり,近年のこの分野の発展には目覚ましいものがある。このたび出版された柳澤信夫・柴﨑 浩著『臨床神経生理学』は,定評ある脳波・誘発電位・筋電図テキスト『神経生理を学ぶ人のために』がまったく新しく生まれ変わったものである。中枢神経系・末梢神経系の区分を超えたダイナミックな構成となり,「基本的検査法の理論と実際」に加えて「精神・神経・筋疾患の生理学的アプローチ」も設けたことで,読者は検査法と疾患の双方向から学ぶことができ,統合的な理解が得られる仕組みになっている。
まず,総論としての神経系の機能検索に関する生理学的検査の意義と限界,将来展望が述べられている。次に,脳波,誘発電位,筋電図,神経伝導検査などの基本的・代表的検査法の基礎的理論と実際の記録法,および正常所見が解説され,それぞれの検査手技で何がわかるかが明快に解説されている。中でも臨床神経生理学的検査を日常的に実施する者にとって必要な神経生理学の基礎的知識が極めてわかりやすく説明されている。この部分はぜひ熟読していただきたい。最後に,代表的な精神・神経疾患における臨床生理学的検索法および臨床的研究への応用が述べられている。
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