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編集後記
佐野 圭司
pp.118
発行日 1970年1月1日
Published Date 1970/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202668
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- 文献概要
本誌の名誉編集顧問であり,米国の脳神経外科学,神経学,精神医学の第一人者であり,最長老者のひとりであるPercival Bailey先生の自伝Up from LittleEgyptが最近出版された。Bailey先生の曽祖父は,Gebhard Boehlerというドイツ人で,米国に移住し,イリノイ州南部に住みついた。そこでかれは家庭をもつたが,隣人はドイツ語のoeの発音ができないのでかれをGaphart Baileyとよんだ。イリノイ州南部のこのあたりはLittle Egyptとよばれる貧しい土地で,そこで1892年5月9日Percival Sylvester Bailey先生は生まれたのである。先生はたぐいまれな秀才であつたが,また苦学力行の人であつた。そして1918年6月Northwestern大学でM.D.をとり,その翌日Chicago大学でPh.D.をとつたのである。
この本は実はChicago Literary Clubで発表されたエッセイを集めたものであるが,それが自然に自伝を形成しているのである。このClubは1874年創設されたいわゆる文化人の集まりであり,筆者も一度Bailey先生につれられて参会したことがある。だれかがエッセイを読んで,そのあと食事しながら懇談ということになるのであるが,そのときのエッセイストはPaul Bucyで,あとの雑談にだれかが当時評判だつた黒沢明の羅生門をさかんにほめて,Bailey先生にぜひみるようにすすめたのを覚えている。
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