脳腫瘍アトラス9
松果体腫瘍—Pinealoma, Teratoma
佐野 圭司
1
1東大脳神経外科
pp.6-8
発行日 1970年1月1日
Published Date 1970/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202654
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Pinealoma
松果体腫瘍の分類に関しては,学者によりその与えかたが非常に異なつており,文献を読む場合にも,著者がいずれの分類にもとづいているか十分注意する必要がある。
松果体の原基は胎生2カ月ごろ,第3脳室後上方で,前方原基とdiverticulum pinealeに生じた後方原基とが合わさつてできる。胎生5カ月から生後2カ月まで,組織学的には大きな明るい上皮様細胞と小さなリンパ球様緬胞とのモザイク構造がみられる。これに似た組織像すなわちtwo-cell patternを示す松果体の腫瘍(第6図)をKrabbe (1923)はpinealomaとよんだが,Bai—leyもその名称を採用して,これをgliomaの1型と考えている。Zülchはこれをanisomorphic pinea1omaと呼称した。しかしこの腫瘍は実は松果体実質から発生するのではなくてteratomaの1種であり,atypicalteratomaとよぶべきであるというのがRussell女史らの主張であり,かなりな支持を得ている。この説に従えば,いわゆる異所性pinealoma (松果体には腫瘍はなくて,他部,多くは第3脳室底,視交叉下垂体部に発生)は異所性ではなくて,正中部に多く発生するteratomaのひとつの表現にすぎないということになる。
Copyright © 1970, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.