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あとがき
萬年 甫
pp.1318
発行日 1969年11月1日
Published Date 1969/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202641
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- 文献概要
編集後記を書く順がまたまわつてきた。遅筆にして鈍なる小生にはまことににが手で,原稿用紙2頁半を埋めるのがたいへんな苦痛である。投稿原稿についてのありきたりの注文はもう出つくしており,いまさら繰り返すまでもない。編集者の責任で採用した論文についての評価はすでに読者に委ねられている。そうすれば編集後記になにを書くべきか,原稿用紙を前にいつもとまどいを感ぜざるをえない。あげくのはてに折にふれての感想などでお茶を濁してしまうのがつねである。
それにしてもこんにちのわが国の神経学会にとつての大きな課題のひとつはスモン病の本態の解明であろう。私事にわたつて申しわけないが,小生の父も74歳で発病し,4年後にスモン病とはべつの脳出血で死亡した。病初にあつた歩行障害などは軽減したが,足蹠のしびれはとれずじまいだつた。あまり苦痛を口にしない人間だつたが,不快感にじつと耐えているのをみるのは,はた目にも実につらかつた。遺体はスモン病の本態解明のお役にたてばと解剖に供し,とれる限りの資料をとつていただいた。現在このようなスモン病の患者が全国に増加しつつあり,みずからが絶対にかからない保証がないとすると,しろうとならずともたいへん不安である。衆智を集めての対策委員会も発足し,着々手はうたれているようであるが,一日も早く本態を解明し,適切な予防策が講ぜられるよう祈つてやまない。ひとつ本誌にそのような論文が寄せられるのを期待しようではないか。
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