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米国のBaltlmore, Johns Hopkins大学でのProf.Walkerの還暦祝賀の2日間のシンポジウムおよびParisでのGuiot, Fessard, G. Tardieu (小児神経学者)らとの楽しい数口を終えて,Madridの第3回国際定位脳手術シンポジウム(4月22日)に出席した。カラッと乾燥した大陸的な空気と,強い日射し,オリーブの若葉もすでに濃くなったMadridは相変らず古めかしく荘重である。会場はCasa Sindicalで,ここでは4月24日から3日間にわたつてヨーロッパ脳神経外科学会が行なわれ,それに先行して定位手術シンポジウムが行なわれた。600人ぐらい入る中程度の講堂で,前回のCopen—hagenのごとく会議の運営,進行は座長がすべてやり,技術員はスライド,映画の映写に1人つくだけというきわめて能率的で簡単な設営であるが,なんの障害もなくスムースに運んだ。参加人員は約180人,日本国内の「定位脳手術研究会」の年次例会と大した差はない規模である。午前,午後,夜間の3部に分かれ,第1部(午前の部一座長Riechert)ではDyskinesiaに関するテーマが集められた。前回よりもさらに定位手術についての技術的な発表は少なく,Edinburgh (英)のGillinghamらによつてパーキンソニズムのCSFにおいてもHomo—vanilic Acidが低下していることが報告され, FreiburgのUmbachらによつても同じく本疾患におけるCate—cholaminの低下が追加された。深部誘導としては,視床からのtremogenic dischargeの記録についての仕事がMontrealのJasperら,MilanoのPagniらによつて出された。しかしこれらの代謝系や,深部誘導の仕事は数年前からたびたび報告されてよくしられたことであつて,新しい所見ではない。
小脳歯状核の手術についての報告もZervas (Philadel—phia)とHeimburger (Indianapolis)の2カ所より出されたが,Heimburgerは破壊と反対側の筋tonusの低下がみられるとし,Zervasは同側のそれがみられるとし,小脳症状診断学の根本にふれるような所見の差があつたが,穿刺座標のコントロールも十分でなく,将来の問題であろう。ただ両所ともに,tremorの変化,効果についてはまつたくふれなかつたことは興味深い。佐野ら(東京)は脳幹手術時の頸運動について述べ, olive核の経験についても少しふれた。また神川ら(大阪)は視床刺激や破壊効果が,両側性にみられることの猫における実験的基礎づけの発表をした。
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