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対称的に二つずつ存在する中枢神経の中で,ただ一つその正中深部のかくれた場所にある小さな丸い松果体は(第1図),太古インドの文献においても神秘的な意義が与えられ,またDescartes (第2図)さえもThe seat of the soul,すなわち聖霊の座であると記載しているほど,神秘的なものとみられていた。このことはわれわれ20世紀の人間にとつてもまんざら合点のいかないことでもない。さて,そこに発生する腫瘍に関してはBlaue以来,数多くの業績があるが,その腫瘍の治療に関しては,ある一部のものを除けば,最近では全摘出手術は断念すべきであり単に脳減圧手術を行ない,深部照射療法を併用することがもつとも良い治療方法であるとする趨勢のようであり1),結果的にみれば,この神秘的な松果体の腫瘍には手をつけるべきではないという事を暗示しているかのごとくである。
さてこの松果体腫瘍がわが国に多発することは著者の1957年のわが国脳神経外科クニックから集計した数値によつても,また,伊藤教授の病理例によつても明らかなところであり,その原因は不明ではあるが一般の認めるところである2)3)(第1表)。東北大学桂—葛西外科,および脳神経外科において経験し,組織学的に確認しえた松呆体部腫瘍はpinealoma25例(第3図,第5図)teratomaとpinealomaの像が混在する,いわゆる,double tumor 3例,teratoma3例(第4図,第6図),astrocytoma 1例,meningioma1例,計33例であり,この他ectopic pinealomaと思われろものとして鞍部付近のもの3例,左脳底核を広範におかしていたもの1例4),および脳室壁全面にびまん性に存在していたもの1例5)(第7図),計5例である(第2表)。
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