特集 脳動脈瘤および脳動静脈瘤(第24回日本脳神経外科学会シンポジウム)
Willis奇形—ある特異な脳血管像を呈する本邦症例について
西本 詮
1
,
杉生 了亮
1
,
竹内 伸二
1
1岡山大学医学部脳神経外科
pp.508-513
発行日 1966年5月1日
Published Date 1966/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202046
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I.まえがき
脳血管写の普及に伴い,本邦の脳・神経関係のクリニックでは,運動不全麻痺や卒中様発作などを呈する患者の中に,ある特異な脳血管写所見を示すもののあることに数年前より気づいてきた。これらの症例は一般に若年者が多く,臨床的に運動・知覚不全麻痺,知能低下,頭痛,クモ膜下出血,痙攣発作,不随意運動などを呈するが,症状はしば一過性でありまた軽度なものが多い。特有なことは,脳血管写所見であつて,両側性に内頸動脈サイフォン部末端(C1)の狭窄ないし閉塞があり,さらにその近傍の脳底部に両側性にモヤモヤ,チリチリした異常な血管網がみられることである。
このような症例については,最初は内頸動脈閉塞症の一型と考えられ報告されている場合が多いようである2)3)が,この閉塞は通常の内頸動脈閉塞とは種々の点でかなり異なつていることが判明している。すなわち,外国に多くみられるいわゆる内頸動脈閉塞症は,動脈硬化性のものが多く,したがつて老人に多く,部位も内外頸動脈分岐部に多く,ほとんど片側性であること,また若年者に発生する場合でも,やはり内外頸動脈分岐部が第1の好発部位で,サイフォン部の閉塞もかなり見られるものの,両側性ということはまずないといつてよく,しかもサイフォン部の閉塞は,片側性でもかなり重篤な神経症状を呈するのであるが,本症例ではこれが両側性にみられるにもかかわらず,その臨床症状は軽いものがほとんどであること,さらに,内頸動脈閉塞症にみられる側副路と本症例のそれとでは後述のごとくかなりの相異があるということなどであり,従来のいわゆる内頸動脈閉塞症とは区別されるべきものであると考えられるようになつてきた。
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