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Willis-Ekbom病(Willis-Ekbom disease)はレストレスレッグス症候群(restless legs syndrome:RLS)の代替病名である.RLSは,脚に不快な感覚が現れて脚をじっとしていられないことを特徴とする慢性の神経疾患である.夕方から夜にかけて症状が強まるためにしばしば不眠の原因となり,生活や仕事に支障をきたすこともある.RLSは比較的頻度の高い疾患で,日本人の1〜4%に認められ,男女比は1:2で女性に多く,年代別では中高年に多くみられるが子どもから高齢者まであらゆる年代に発病する.患者の大部分に病気の認識はなく,多くは診断されることなく見過ごされているのが実態である.病態については,脳が鉄欠乏となり,夜間に中枢ドパミン神経伝達が低下して脊髄の神経細胞が興奮状態となり,下肢の筋肉に興奮と異常感覚が発現するメカニズムが考えられている.患者の大部分は原因の明らかでない特発性RLSと診断されるが,一部は鉄欠乏性貧血,腎不全,妊娠,末梢神経障害などに伴う二次性RLSである.
Willis-Ekbom病という病名は,最初に患者を医学文献に記載した英国人医師Thomas Willis卿(1621-1675,図1a)とrestless legsの疾患概念を提唱したスウェーデンの医師Karl-Axel Ekbom(1907-1977,図1b)に由来する.Thomas Willisは,国王と議会が対立を繰り返す17世紀の英国に生きた内科医で解剖学者であり,王政復古を遂げたチャールズ2世に仕え,オックスフォード大学自然哲学部学長を務め上げた高名な医師である.1664年には当時として最も正確な脳の解剖の教科書を著し,この業績にちなんで脳底部の血管はCircle of Willis(ウィリス輪)と呼ばれている.また,多尿症患者の尿の成分を分析するために自ら患者の尿を舐めて蜂蜜(ラテン語でmel)の味がしたことからdiabetes mellitusと糖尿病の病名を名づけたことでも知られる.そして,1672年に現在のRLSの診断基準を満たす1人の女性患者をラテン語で医学文献に初めて記載した.1685年に出版された“The London Practice of Physick”の中では,Of the Watching-Evilの章でその患者について述べている.
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