今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
2.妊娠合併症の治療と注意点
[脳血管疾患] Willis動脈輪閉塞症(もやもや病)
熊谷 万紀子
1
,
安達 知子
2
1葛西産婦人科
2総合母子保健センター愛育病院産婦人科
pp.546-547
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100266
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1 診療の概要
両側内頸動脈終末部からWillis動脈輪,さらに脳主幹動脈基部にかけて血管が閉塞をきたす原因不明の疾患である.閉塞性病変の進行に伴い,脳底部などを中心とする異常血管網が出現してくるため,別名“もやもや病”とも呼ばれる.
本疾患は本邦に多発し,年間有病者数は2,000~3,000人前後とされており,男女比は1 : 1.83で女性に多い.発症年齢は5歳前後と30~40歳台の2つのピークを有し,前者を「若年型」,後者を「成人型」と呼ぶ.若年型では脳虚血発作で発症するのに対し,成人型では脳虚血のみならず頭蓋内出血で発症することが多い.その理由には,本症の自然史が関与するとされる.すなわち,初期には脳主幹動脈閉塞により脳虚血症状が出現するが,やがて側副血行路の形成により代償され一時的な症状の改善がみられる.しかし,晩期には脆弱な側副血行路が破綻して頭蓋内出血を生じる1).
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