特集 第24回日本脳・神経外科学会・II
シンポジウム:神経再生と移植・2
神経成長促進因子の研究—特殊タンパクとその抗血清による神経再生の調節作用
中沢 恒幸
1
1慶応義塾大学医学部神経科
pp.344-350
発行日 1966年4月1日
Published Date 1966/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406202023
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I.はじめに
神経成長促進因子Nerve growth promoting factor ( NFGと略す)の研究はE. D. Buekerのマウス肉腫同種移植によつて移植部位を支配する知覚・交感両神経節の肥大をみたことに端を発し,以来L. Montalcini13)〜22),S. Cohen4)〜7)らにより主として毒蛇およびマウス顎下腺より抽出した促進因子につき探究され今日にいたつている**。NGFは神経系の成長を促進する特殊タンパクであるが従来信じられていたことはこのタンパクが齧歯類以外の哺乳動物にほとんど存在しないということであつた。換言すればNGFは種属特異性タンパクであるというのである。
しかし種属特異性を主張することはもちろん慎重でなければならない。ことにNGF抽出臓器が顎下腺であるので多量に存在するmucinの除去,カラムの組合せなど抽出化学上検討すべき多くの問題を残している。さらにS. Cohen6)の抽出法を追試してみるとマウス顎下腺よりNGFを恒常的にとりだすことがむずかしい。どこかに再現性のよい抽出法はないものか,そして本当にマウス顎下腺のみに存在するのか,この疑問にはじまつた追求から以下にのべる事実がみいだされた。1つはウシ顎下腺よりNGFは抽出可能であり,そのNGFは切断神経の再生をきわめてよく促進すること,他はグリア細胞の増殖因子をみいだしたことである。
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