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VIII.脳の切割sectioning of the brain
1.脳室系ventricular system
2.脳実質の病変cerebral parenchymal lesions
1)〜5)まで8,10月号既載
6)変性疾患degenerative disorders
中枢神経系の構成要素,とくに神経細胞および神経線維の原発性変性を特徴とする疾患群を変性疾患degene—rative disordersと総称する。変性疾患の代表的なものについて簡単に言及する。
i) Alzheimer's diseaseでは大脳皮質の変性萎縮が著明であるが,この病変と脳の動脈硬化症との間には相関関係がない,大脳半球全体に皮質の萎縮が認められるが,その程度はかならずしも著明ではない。海馬hippo—campusおよび脳弓fornixの萎縮が他部のそれにくらべてめだつ。皮質の萎縮を反映して側脳室が拡張するが,基底核や問脳は肉眼的変化を示さない。萎縮部皮質に組織学的に無数の老人斑seniles plaqueおよび神経原線維変性Alzheimer's neurofibrillary degenerationを証明することがこの病気の特徴である。これらの組織学的病変の証明にはvon Braunmühlまたは辻山の鍍銀法が推賞される(ヘマトキシリン・エオジン染色その他のchro—matic stainでは老人斑の証明はほとんど不可能だし,神経原線維変性の証明も容易ではない)。老人斑は健康な老人脳にも相当数発見されるし,神経原線維変性も老齢者の海馬,海馬回および紡錘状同にかなり規則的に出現するので(70歳以上の老人脳ではほとんど例外なしにこれらの部位に出現)注意を要する。ただし,健康老人脳では神経原線維変性はこれらの部位に限定している。
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