連載 神経病理基礎実験法
中枢神経系の肉眼的検査(2)
並木 秀男
1
,
松山 春郎
2
1長崎ABCC病理
2慶大医学部病理
pp.820-827
発行日 1965年8月1日
Published Date 1965/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201904
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VI.脳実質cerebral parenchyma外表面の観察external observation
1.左右半球の対称性symmetricity
固定中に脳の変形が起こると,外表面の正確な観察が困難になるので,脳底動脈の下に糸を通し,フォルマリン固定液の十分入つた容器のなかに脳を吊して固定する。剖検時に脳に切割を加えた時には,切口を下にして,固定液中に沈めておけば,それほど変形しないが,ガーゼに包むと,ひどい変形が起こるうえに,合せ目の固定がうまくゆかないので禁物である。脊髄を狭小な容器中で固定すると,変形がいちじるく,肉眼的検査および組織切片切出しに不都合である。取りだした脊髄の上端部の硬膜に鉤(釣針のようなもので良い)をかけ下端硬膜に軽い錘しをかけ,細長い容器に吊して固定すると,この変形を防げる。直接脊髄をしばつたりするのは禁物である。
左右大脳半球の非対称性は一方の半球が他方より大きい場合および小さい場合に起こる。一方の半球が腫大するのは,通常その半球内になんらかの空間占有病変space-occupying lesionがあるためである。すなわち脳実質内の原発性および転移性腫瘍,出血および急性の梗塞症,膿瘍,結核腫その他の肉芽腫や片側半球の外傷などである.片側半球の縮小する典型的な例は大脳半球萎縮cerebral hemiatrophyである。この疾患は幼児期の癒痛発作の続発症と考えられている。この場合逆側小脳の萎縮を伴うこともある。片側脳半球内に広汎な陳旧性梗塞がある揚合にも,この半球が健康側半球より小さくなることは明白である。
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