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この号には昨秋の日本脳,神経外科学会におけるふたつの特別講演がのせられている。Dr. Pudenzはいうまでもなくventriculo-atrial shuntの創始者である。この手術にはいろいろな欠点も合併症もあるが,現在のところ水頭症に対するもつともすぐれた手術であることはだれしもみとめるところであると思う。われわれが大学を卒業して入局したころは水頭症というと予後が悪いというので受持ちをみんな敬遠したものであつた。ところが今では私の教室に入つてくる若いお医者さんたちには水頭症は"Dankbar"な病気として歓迎されているのである。これはひとえにこの手術のおかげであると思われるのである。この手術はまた私にはいろいろな意味で思い出深い。この手術の先駆をなしているのは1951年に発表されたNulsenとSpitzのventriculo-jugular shuntであるが,これはたまたま私の滞米中であつて,この最初の発表を直接聞くことができたし,また1952年のはじめわざわざフィラデルフィアに当時Grant (ペンシルヴァニア大学教授)の助教授をしていたNulsenをたずねて,手術も見せてもらい,最初の報告例を示説してもらつた記憶がある。当時の’Nulsenの用いた管は途中に金属の弁があり,いかにもごついものであつたが,その後Spitzが工学者のHolterと協力してシリコンラバーの弁のついた管を作り,さらにこれがPudenzの術式にまで発展したのである。Nulsenの研究に深い感銘をうけて,私は帰国後,あちこちの医科器械屋に同じような管が作れないかと頼んでみたがだめであつた。ところがPudenzの1957年の発表をみて,その管の構造の簡単なことにおどろき,ふたたび器械屋にハッパをかけて,やつと同じようなものができるようになり,それをつかつて,わが国最初のventriculo-atrial shuntに成功することができたのである。
Dr. Poppenは手術の名人として米国でもつとも高い評価を得ている人である。1952年,ボストンでMGHにDr. Sweetをたずねた時,たまたま話しが彼のことに及んだが,あの口の悪いしかもライバルのDr. Sweetが私にJim (Poppenのこと)の手術はmarvellousだ,ぜひ見学しなさいとすすめたことがあるほどである。
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