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Mebanazineはα—methylbenzyl—hydrazineでうつ病治療に用いられるMAO-Iで,1日10〜40mgで副作用ほとんどない。口がかわく,多少のめまいなどが時にみられる。著者は本剤を用いdouble blind法で検討中,7例のうち3例につよい低血圧虚脱がなんらの前駆なしに突然襲来するのをみた。第1例66♀,5〜10mgを16日つづけたところ突然,収縮期および拡張期血圧ともに急に低下,失神,その後も低血圧失神が頻回におこつた。血圧を100mmHgに維持するにはノルアド点滴をつづけなくてはならなかつた。投薬中止後19日でようやく,まつたく回復。第2例61♀,5〜10mg,20日投与で起立性失神おこる。この発作はその後10日つづいて,回復した。第3例68♀,5〜10mg,18日投薬後起立性失神,低血糖発作おこる。この症例は糖尿病なのでインシュリンを使つていたが特発的に低血糖昏睡となり,インシュリン量を30%に減らすに昏睡去る。16日後にようやく血圧が投薬前に復したら,また尿糖がつよくでるようになつた。mebana—zineの低血糖作用はそれが組織から消失するまでつづくのであろう。動物に血糖下降剤を与え同時にmeba—nazineを12日使うとノルアドレナリン遊離が抑制され,アドレナリン分泌が阻止されるという。本剤の第3例における低血糖惹起機序は,抗カテコルアミン作用にもとづくのであろう。MAO-Iはチーズと共に与えると高血圧発作をおこすことが有名になつたが,失神,低血圧虚脱というのは報告がない。しかも10〜19日もつづくというのは稀だろう。この長くつづくのは,MAO-Iが体内からまつたく消失するまで作用があることを示すと思われ,そうした意味で注目される。
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