連載 神経化学実験法・9
尿中アミノ酸の検査法
佐野 勇
1
,
柿本 泰男
1
Sano Isamu
1
,
Kakimoto Yasuo
1
1大阪大学医学部神経科
pp.868-872
発行日 1964年10月1日
Published Date 1964/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201723
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はじめに
最近のめざましい分子遺伝学の発達によつて,古くGarrodにより提案された遺伝性代謝異常の概念は実体性が裏づけられ,遺伝性疾患を代謝異常として把握しようとする生化学的研究はますます盛んになりつつある。ことに精神神経科領域の疾患には遺伝性のものが多く,生化学的検査ないしは研究の重要性に関する認識は深まりつつある。この領域で生化学的異常が明らかにされている疾患はまだ精神薄弱のうち特殊型に分類される疾患群にとどまるが,やがてはより一般的な疾患の病因解明に生化学的研究方法が重要な役割を演ずるであろうことは疑いがない。
ここでは特別な設備を必要としない一般クリニックでも行ないうる検査法とデータの解釈の方法についてのべる。現在では数多くの遺伝性代謝異常がみいだされているが,そのほとんどは一般の病院や臨床医によつてみいだされたものであり,今後このような簡単な方法が従来の臨床検査方法と併用されることによつて,未知の疾患がみいだされ,個々のデーターの集積が疾患のより根本的な理解へと発展することが期待される。またフェニールケトン尿症やガラクトゼミアのように早期に発見すれば治療も可能な疾患もあり臨床の実際においても以下にのべる検査法は重要であろう。
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