連載 神経化学実験法・5
脳組織のアミン測法定—II.脳内アミンの研究法
佐野 勇
1
Sano Isamu
1
1大阪大学医学部精神神経科
pp.496-500
発行日 1964年6月1日
Published Date 1964/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201656
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はじめに
脳内アミンに関する研究は,アミンの定性法,定量法の進歩とともに進められてきた。しかし生物学的活性アミンはいずれも含量が低く,最も高濃度にふくまれる脳の一部分(たとえばドーパミンの場合の尾状核や淡蒼球,ノルアドレナリンの場合の視床下部や脳幹背側部)をとりあげても10μg/g内外以上には達しない。したがつて脳組織よりこれらのアミンを分離精製し,純物質として構造決定が行なわれた上で定量法の研究が進められたことはないから,定性定量の特異性については,現在なお慎重でなければならない。たとえばドーパミンから自酸化または水酸化酵素系の触媒で容易に2, 4, 5—トリハイドロキシフェネチラミンが生ずる1)。
このアミンはノルアドレナリンとisomerであるのみでなく,多くの溶媒系でのクロマトグラフィーでノルアドレナリンと分離しない。このように構造が異なるにもかかわらず,preparativeに分離しない物質を"isogra—phic"であると名づけた人がある。この物質は,ノルアドレナリンの側鎖のOHをメチル化することによつてのみ分離してくる。
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