書評
—横地千仭 著—脳幹伝導路模型
時実 利彦
1
1東大脳研生理
pp.814
発行日 1963年8月1日
Published Date 1963/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201526
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脳幹が上行性,下行性の神経伝導路やその中継核や脳神経の起始核の交錯する場として,また,呼吸や循環などの自律機能の調節中枢の場として,生命維持に対するその重要性は古くから知られていることである。さらにまた,運動機能に対する促進と抑制の機序が行なわれる領域として,大脳皮質機能に対する賦活と抑制の機序による意識の調節の座として,その重要性がいつそう注目されるにいたつた。とくに最近,脳生理学のドピックスのひとつである逆説睡眠の機序が下部脳幹にあることが示唆されるにいたり,研究者の関心がよりいつそう脳幹に向けられるようになつた。
このよう機能に関する研究はいうまでもなく,脳幹の精細な構造に関する知識に支持されてはじめて可能なことである。われわれは,多くの優れた脳解剖学の成書のページを一枚一枚くめることによつて,その構造を詳細に知ることができるはずである。しかし,それはとかく平面的な知識になりがちで,かくも複雑な構造の脳幹の立体的なイメージを作ることはなかなか至難なことである。この困難さは,たとえばKriegの脳解剖学書やWeberの脳の厚紙模型などによつていくぶんは解消されるが,まだわれわれの悩みを十分にときほぐしてはくれない。
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