書評
—瀬戸八郎 著—Studies on the Sensory Innervation (Human Sensibility)
津崎 孝道
1
1横浜市立大学
pp.812-813
発行日 1963年8月1日
Published Date 1963/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201525
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最近,末梢神経の組織学的研究は,多くの神経組織学者の撓まぬ熱心な努力によつて,めざましい発展を展開してきているが,それでもなお,神経組織の神秘な機能や構造に関する謎が,ことごとく解けたとは申しかねる段階にある。特に,知覚神経の終末においてしかりである。いろいろの観点からの精細な研究によつて,この神秘の謎を解くことが熱望されてはいたが,なにぶんにも,終末装置の現出をBielschowsky法とか,Cajal法にたよつていた従来のやりかたでは,十分に明確に現出できなかつた。
本書は神経組織学の立場から,知覚神経の分布を明確に示した英文の単行本で,幾多の貴重な新事実を提供している。著者の瀬戸教授は長年にわたつて,人間の知覚神経の分布の研究に精進された学者である。同教授の輝やかしい研究結果は,1957年,すでに日本文で医学書院から「人間の知覚」という書名で出版され,非常な好評を博したものであるが,残念ながら,それは日本人および少数の日本語を解し得る外国人にしか読まれなかつたものと思われる。筆者はかねがね,本書の欧文による出版を熱望していた。欧文ならば,日本人はもとより,世界各国の人達も読むことができ,多くの利益をうけるからである。いまここに,本書が第2版として,英文で出版されたことは,日本の学界のために,喜びにたえない。
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