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43歳,黒人男子。30歳のとき脳腫瘍にてBarnes Hosp.入院,小脳hemangioblastoma剔除,術後視神経萎縮・視野狭窄・歩行不全・眼震を残したが,Hb 16gで一般状態良好。32歳:高血圧あり,運動時に呼吸促進・浮腫あり,減塩食にて軽快,Hb. 14.0g。42歳:右鼻翼小結節生じ入院,血圧,200/96, Hb 19.1g,Ht56,白血球7000,血清尿素12mg。右甲状腺にも1cm径の硬結あり。PBI 5.4μg,腫瘤にはI131集まらず。鼻翼結節は組織学的に腎癌転移と決定した。そのころから右前頭痛を訴え,神経学的精査を受けたが正常である。肺野に多数の撒布病巣あり。甲状腺結節は癌ではない。腎盂造影では両側嚢胞腎というべき像である。それで腎癌はすこしおかしいので,気管支鏡で調べても癌細胞なく,肺野撒布巣はついに開胸精査を要した。とつた病巣は腎癌転移にまちがいない。こうしてHN2 0.4mg/kg投与。2ヵ月後左大腿病的骨折にて整形入院。腎癌骨転移である。ついでに右上腕にも転移を発見する。Ht 54,網赤球7.4%,栓球19.6×104。骨病巣は照射する。ついで血液学病棟に移りcytoxan療法を行ない,立つことができるまで軽快。ついに呼吸困難・血尿となつて,最後の入院をした。血圧170/90,神経学的症状はない。肝10cm腫大。Ht 33。尿蛋白(廾)血球を含む。血清Ca13.2-16.1mg, P 2.3-3.3mg,alk. Phosphat. 9.5-6.9,患者血清にはerythropoietinが増加している。Erythropoietinは腎腫瘍でも小脳血管腫でも産生されるが,この症例では小脳血管腫剔除後まもなくHbが高くなつていた。しかし,両側に嚢胞腎があるので,多血症は小脳血管腫のためというより腎原性と考えたい。腎癌は嚢胞腎の上に発生し,多血症をいつそう顕著にしたのであると思われる。文献的にも,小脳血管腫の患者からしばしば腎癌が発生し,そうした症例は多血症を呈しやすい。そういう意味で興味深い。
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