特集 低体温法
追加討論・1
脳血流遮断時間と低体温の効果
千葉 勝二郎
1
Katsujiro Chiba
1
1東京大学医学部脳神経外科
1Dept. of Neurosurgery, Tokyo Univ. School of Medicine
pp.1079
発行日 1962年12月1日
Published Date 1962/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406201372
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従来動物実験における脳血流遮断についてはいろいろの方法が試みられてきた。しかし脳血流完全遮断という点になると実験動物の解剖学的条件,実験条件の煩雑性などの問題がある。また心臓での流入・流出血流を遮断する方法は低体温時の心筋の被刺激性亢進などのため遮断解除後にFibrillationの発生をみ,エレクトロシヨック,マッサージなどの操作が加わり,そのため低体温時の脳血流遮断時間の決定に際してかなりの誤差を生ずるものと思われる。われわれは脳血流完全遮断および遮断解除後の諸問題を解決する意味で次のような実験方法を試みた。
動脈側は最上肋間動脈と左鎖骨下動脈の問に,静脈側は総腸骨静脈にそれぞれカニューレを挿入することにより動静脈回路を作り,その間に末梢抵抗と熱交換器を挿入して末梢抵抗および静脈血灌流量を調節することにより回路の血流量を一定にした。この方法により肋間動脈よりの副血行路は遮断され腕頭動脈,左鎖骨下動脈をブロックすることにより脳血流は完全に遮断され,低体温時での心臓への直接操作を加えることなく,また遮断解除後心臓への煩雑な操作もなく血圧,心博数の変化も少なく脳血行の回復も早い利点がある。
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