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この症状を精述したのはMayo CL.のMoersch (1956)だが,それ以前にも同様の症例があり,今日までに26例の報告があるそうである。著者らの症例は32歳男。15年前ソ連捕虜となつているうちに,はしめて頸部がややこわばつてきた。家族歴,既往歴には著変なし。頸椎運動がしにくい。この硬直がきわめて徐々に進行,肩・上腕,ついで臀部の筋群がこわばり,やがて前腕,下褪にまで,だんだん進展してきて,肩がうまく動かせない,股が動かないようになり,労務不能となつた。送還されて著者らのHeidelberg精神神経科に収容。最近は動かし,または叩いて,上腕前腕・上下褪に著しい疼痛があり,無理に動かしたあとは,その筋に無力症状が現われる。歩行は弾力性を失なつて棒が歩くようでほとんど1日中動けない。頸・肩・上腕・前腕・臀・上下褪のこわばつた筋は硬くなつた。胸廓の筋もこわばり,呼吸が抑制された。首はもちろん動かせない。精神神経学的にはほとんど異常がない。Trapanal麻酔,Pantolaxによる筋弛緩法を用いても,上述の硬直は去らない。つまり神経系の疾患にもとづく病変ではない。筋自体または運動性終末板の障害かと思われる。筋の諸酵素には異常が発見できないし,組織学的にも著変がない。文献症例を展望して男に多い(♂19,♀7)。遺伝または惹起因子見あたらず。数年〜十数年の経過(平均年令41歳)で緩慢に増悪する随意筋群硬直で,半数以上に強い疼痛・ケイレンを伴う。顎関節は侵されない。また,神経学的変化を欠き,麻酔・筋弛緩剤が寛解作用なく化学的検査所見に手がかりがない。ヒステリー・慢性テタヌス・Dys—tonia musculorumとは明らかに異なる。糖尿を見る例,甲状腺機能亢進を見る例が稀でないので,何かそうした代謝異常と関係があると思われる。
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