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はじめに
持続睡眠療法は,Wolffによつて精神科領域にはじめて用いられたが,わが国では下田2)によりSulfonalを用いた持続睡眠療法が始められ,今日まで特に躁うつ病の治療に用いられてきた。しかしながらSulfonalによる方法は,Sulfonalの蓄積作用のため,重篤な中毒や合併症をひき起こしやすく,実施するのにはなはだ厄介な点が多い。ところが近年,各種のPhenothiazine誘導体の出現により,これに睡眠剤を加えた新らしい睡眠療法が次々と発表されている3)〜8)。
著者の一人(石橋)9)も,Sulfonal, Amobar—bital, Chlorpromazine, を併用した睡眠療法を行ない,これまで数多くのうつ状態の患者の治療を経験してきたが,大部分の患者は持続睡眠療法を終了すると完全に症状がとれ,その後において,他の薬物療法を必要としない。しかしながら一方では持続睡眠療法後も完全に症状がとれないで,他の抗うつ療法の追加を必要とするものがある。本論文においてはこの2群について,その持続睡眠療法に伴なうMinor Tremor (MT)の推移を検討してみた。MTが精神生理過程のかなり忠実な指標であることは,今までに稲永とその協同研究者ら10)によつて明らかにされているので,MTを指標とすれば,持続睡眠療法に対して良い反応を示すものと,そうでないものとの間に明らかな差が見られるものと予想した訳である。さらにまたこの2群が臨床像の面でどのように異なつているかについても検討してみた。本研究は,うつ病の生体反応の研究のいとぐちとして手がけたものであるが,興味ある結果を得たので報告するしだいである。
1. Prolonged sleep treatments using sulfon-al, amobarhital and chlorpromazine were carried out and the serial minor tremor study was done in the depressive patients. The five patients responded very well and the other five did not to this therapy.
2. The former well responding group did show the remarkable increase of alpha band (energy %) and the latter five did not after the tre-atment. There were some differences in both the beta and theta bands.
3. In one case of manic-depressive psychosis, dominant beta was seen in the depressive phase and the dominant theta was observed in the hypomanic phase.
4. Based on the above mentioned results, brief discussions were done on the pathophy-siological process of depressive states.
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