Japanese
English
症例
傍矢状洞脳膜腫について
Parasagittal Meningioma
鈴木 二郎
1
,
妹尾 秀治
1
,
石橋 孝雄
1
Jiro Suzuki
1
,
Hideji Senoo
1
,
Takao Ishibashi
1
1東北大学医学部桂外科教室
1Department of Surgery, Tohoku University, Faculty of Medicine
pp.433-437
発行日 1958年6月1日
Published Date 1958/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200683
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緒言
脳腫瘍といえば,一般に悲惨な疾患であり,その予後は頗る悪いものと思われている。成程,悪性膠質腫の様に,優秀な脳外科医の統計的観察によつても,手術後平均1年未満しか生存し得ないというものもあるが1),脳膜腫の様に,発育の遅い良性腫瘍では,10年以上も労働に従事している例が多くみられるのであり1)2)3)4)5),積極的に病巣を発見し,開頭手術によつて,病脳の除去に努める事は医人のつとめであろう。然しこの様に発育の遅い良性腫瘍は,病巣が特に重要な中枢にかかつて居ないと,相等大きくなる迄,頭痛も嘔吐もなく,無症状のまま経過し,癲癇発作の発来により,長い間癲癇として治療され,或は精神変調から,精神病として誤診されている事さえあり,開頭してみると,既に手拳大,或はそれ以上に迄大きくなつている事さえあるので,注意深い診断が必要となつてくる。
然し脳腫瘍の疑いをもつて,注意深く既往歴を検討し,症状発現の順序を聞き,神経症状を調べ,X線写真,気脳術をすれば,その局在,大きさ,手術の難易は容易に判る場合が多い。その場合,脳血管撮影はgrant2)6)は,脳膜腫では出来るだけやらない方がよく,脳血管撮影により,血管の攣縮が起り,脳神経脱落症状,或は生命の危険すらも経験するであろうという様な事を言つており,我々もこの様な苦い経験を味わつた事があるので,脳膜腫の疑いのあるものには,脳血管撮影は行つていない。
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