--------------------
精神神経科領域に於ける「コントミン」の使用経験について
田原 幸男
1
,
吉川 博明
1
,
伊藤 克彦
1
,
福智 正士
1
,
堤 盛令
1
1名古屋大学医学部精神医学教室
pp.403-409
発行日 1956年1月20日
Published Date 1956/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200480
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
序言
一般に哺乳動物は低温下に於いては基礎代謝を高めて低温に対抗し,自体を保護するものであるが自律神経を遮断しておけば直接末梢にのみ働らき基礎代謝を著しく低下させて従来の方法では耐えられなかつた様な重大な侵襲にも耐えられる様になる。この試みは1951年H.Laborit及びP.Hugenardによって行われ,以来数多くの業績を生むに到つた。
Laboritは所謂人工冬眠の理論を植物神経系内分泌系機能の中断に発展せしめたが更に,Anti-histamin剤,特にPhenothiazine誘導体の混合使用を提唱して,その臨床的効果を証明したが所謂人工冬眠剤として知られるChlorpromazineを精神病領域に於いて始めて試みたのは矢張りフランス学派であり,Hamon (1952) Paradie and Velluz (1952)を嚆矢とする。次いでDeschamp及びDelay等の報告が出た。独逸では本剤の合成は1953年4月に完成したが一般研究機関がこの応用を試み始めたのは同年6月以降といわれる。我が国に於いては,漸く本年になつて本剤の合成が為され,吉富製藥よりContominなる名で売り出されるようになつた。そこで我々は諸外国に於ける報告検討と共に本剤の臨床効果を判定すべく精神分裂病を主とし,その他,2,3の精神,神経疾患に本療法を施行し認むべき効果を得たのでここに報告する次第である。
Copyright © 1956, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.