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I.序論 外因性精神病の一つであるペラグラ精神病は今日でもときどきみられるのであるが,初診時その診断は必ずしも容易ではない。こゝ2,3年の間に我々は鬱病あるいは鬱状態の診断のもとに治療中,皮膚症状が発現してペラグラ精神病なることがはじめて明らかになつた症例を2,3経験したので,ペラグラ精神病の早期診断はできないかと考え,我々の症例をはじめ,若干文献をもしらべてみたところ,この途は必ずしも平易でないことが分つた。これに関する考察を本文で試みることにする。
さて1937年Elvehjem1)によつてペラグラがニコチナミド(Nicotinamide)で治癒することが分って以来,ペラグラの治療はもとより,ニコチナミドの基礎的,臨床的研究があいついで行われその報告は莫大な数に達している。ペラグラが玉蜀黍を主食とする地方に多発するので,ペラグラと玉蜀黍との関係は最初から問題にされてきたが,玉蜀黍食がニコチン酸を1日約15mg含むのに,ペラグラを起さない食餌でも1日5mgしか含まれぬことがあるので,玉蜀黍などの植物性蛋白質の有害作用が考えられ,そのアミノ酸組成に欠陥があり,また腸内細菌群に影響を及ぼして,そのニコチン酸合成を阻害するなどのことが想定されている。さらには玉蜀黍中にペラグラをおこす毒性物質(色素)が含まれていると考えている人もある。ともあれペラグラの成因とニコチン酸の機能とが密接な関係にあることは,すべての人々に支持されている事実である。
1) The clinical features of four cases of pella-grapsychosis were reported. These cases showed in early stage mental symptoms and almost no skin symptoms, which appeared only several months later.
The symptoms and the diagnosis of early pell-agra with only mental symptoms, which can be called subclinical pellagra, were described and discussed.
2) The amount of several niacinderivatives in the urine and DPN of the blood of these cases was determinded respectively.
In one of our cases, the administration of INAH could not exacervate his symptoms, which seems to contradict the hypothesis that INAH is antivitamin of niacin.
The significance of tryptophane and porphyrine metabolism in pathogenesis of pellagrapsychosis was discussed.
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