研究と報告
ペラグラ精神病の特殊な1症例
池沢 至
1
1東京都立松沢病院
pp.589-594
発行日 1961年7月15日
Published Date 1961/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200351
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
1.ペラグラ精神病の1例について報告した。
2.精神症状は皮膚症状に先行して始まつたため早期診断はできなかつた。神経衰弱様状態より不安恐怖,関係・被害妄想が先行し,皮膚症状とともに昏蒙状ともいうべぎ軽い意識障害が断続的にあらわれるという経過を示した。
3.治療は皮膚症状があらわれてから,1日量,ニコチン酸アミド,ビタミンB2,ビタミンB12,ビタミンB6,ビタミンCを連日皮下注射し,食餌療法を併用して1ヵ月間行なつたが,ほぼ2週間で皮膚症状も精神症状もともに軽快し著効を呈した。
4・本例は,Anorexia nervosaが基盤となり,消化器性因子が加わつてペラグラ準備状態がつくられ,さらに心因性の因子が加わつて栄養不足が著明となりペラグラを発症するような栄養障害をおこしたものに,インスリンの影響が加わつて拍車をかけ,皮膜発症を促したものと考えられる。
5.本例は,意識障害の程度や,その病状の経過が示すごとく,ペラグラ精神病としては軽度のもので予後も良好であつた。
Copyright © 1961, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.