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鵞膚反射(I)—トリハダの生理並に病理
冲中 重雄
1
,
豊倉 康夫
1
Okinaka Shigeo
1
,
Toyokura Yasuo
1
1東京大學醫學部冲中内科
1Dept. of Intertal Medicine. Tokyo Univ.
pp.259-268
発行日 1952年9月1日
Published Date 1952/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406200296
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自律神經支配を受けている皮膚現象の中,最も對蹠的な位置を占める者に發汗と立毛がある。前者は通常高温高熱の環境で發生するに反し,後者は殊に寒冷の作用に依つて出現する者である。動物が冬になると毛を立てたり,羽ぐくもつたりする事に依つて,一には熱不導體たる室氣層を厚くし,一には又之により外氣に觸れる皮膚面積を小にして體温放散を少くする事は容易に推測される所である。發汗も立毛も動物の皮膚體温調節に於ける重要な自律神經反射である。人に於ては立毛現象は通常鵞膚(トリハダ)として見得るのであるが,之も種族發生學的に見て又寒冷に對する極めて合目的であつた反應の遺残と見做し得よう。十九世紀末から廿世紀初頭にかけて自律神經系に關する諸研究が踵を接して現れた頃,鵞膚現象も當然其爼上に上り,Langley67-70), André-Tho-mas1-6), Böwing15)16)等を始め多くの神經學者,生理學者の観察研究がなされた。
最近尚米國學派に依る自律神經系生理に關する知見の飛躍的發展に加えて,植物神經反射の臨床神經學的應用の贋値が漸く問題にされつLある折,茲に從來等閑視されていた傾向のある鵞膚反應に就て汎く新舊の知見を総括整理し,又我々の考をも述べてみたいと思う。
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