Japanese
English
脳・脊髄のMRI画像アトラス
体幹失調のみを呈した小脳虫部梗塞
Small Cerebellar Vermis Infarction with Isolated Truncal Ataxia
佐治 直樹
1
,
山崎 浩
1
,
山本 伸昭
1
,
金田 純子
1
,
清水 洋孝
1
,
松山 善次郎
1
,
喜多 也寸志
1
,
田渕 正康
1
1兵庫県立姫路循環器病センター神経内科
pp.528-529
発行日 2005年6月1日
Published Date 2005/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1406100423
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症例
症例は72歳の女性。既往歴に高血圧症,高脂血症。2004年10月20日午前中に起立困難と歩行障害が突然出現し,当科に紹介入院となった。入院時のバイタルサインや一般内科学的所見には異常を認めず。神経学的所見では眼振,失調性構音障害,四肢の運動失調などを認めなかった。体幹動揺のため坐位保持は不安定であった。下肢の筋緊張は低下し立位保持も困難であった。継ぎ足歩行は不良で開脚歩行を呈し,左側への体幹偏倚を認めた。入院日の頭部MRIで小脳虫部の吻側左側に梗塞巣を認めた(Fig. A)。また,左小脳半球に5mm大の無症候性陳旧性脳梗塞を認めた。頭頸部MRAでは両側椎骨動脈と脳底動脈を含めた主幹動脈の描出は良好であったが,両側の上小脳動脈(superior cerebellar artery:SCA)は同定できなかった。入院後抗血小板療法を開始し,第5病日から歩行可能となり,小脳症状はほぼ消失した。第7病日の冠状断・矢状断を含めた頭部MRIにて,小脳虫部の小脳小舌から中心小葉にかけての梗塞巣を同定しえた(Fig. B, C)。
コメント
本例は小脳虫部の小梗塞が体幹失調の原因になったと考えられた。小脳虫部は,吻側は上小脳動脈内側枝(medial branch of SCA:mSCA)に,尾側は後下小脳動脈内側枝(medial branch of the posterior inferior cerebellar artery:mPICA)に支配され2),脊髄小脳路や前庭神経核から協調運動や姿勢に関する情報を受けている。小脳虫部梗塞は脊髄小脳路を含む神経線維の連絡障害により体幹失調を引き起こすと考えられる。
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